Categories
Economics Finance Technology

中央銀行デジタル通貨

日本は2024年上半期に1000円5000円10000円札の新紙幣を発行する予定となっている。なぜ国は頻繁に紙幣を交換するのだろうか? 約20年ごとに行われているこの交換に様々な理由がある。その内の一つが偽造を防ぐためだとされている。世界はデジタル通貨の発行に向かって急速に進んでいるが、日本は新しい紙幣を印刷しようとしている。これは、日本人の多くがいまだに紙幣を使用して貯蓄することを好むからだ。しかし、若い世代はクレジットカード決済、QR決済システムやオンライン・バンキング/ネット・バンキングを利用するようになってきている。今回の紙幣の刷新のタイミングは、一見政府も十分に考慮されてないように思えるが、とにかく一筋縄ではない感じが漂っている。

諸外国も日本もデジタル通貨を開発中であるにもかかわらず、なぜ新しい紙幣を印刷するのだろうか?街の店舗、レストラン、銀行全体のATMやレジは全て、新しい紙幣を処理できるために更新されなければいけない。新しい紙幣を印刷する理由は何だろうか?時間が経てばわかるようになってくると思うが、ほとんどの国々が既に自国のCBDC(中央銀行デジタル通貨)に取り組んでおり、日本もすでにテストまで行っている。各国がCBDCを発行することはほぼ確実になってきて、ここから数年にわたって世界中で大注目されるテーマとなるだろう。

CBDCとは?

CBDCは、Central Bank Digital Currencies(中央銀行デジタル通貨)の頭文字をとって省略された言葉で、中央当局によって作成、管理や操作されるデジタル版の通貨だ。現在私たちが使っているお金も、データベース上の数字に過ぎないのである意味デジタルなお金だ。であれば、現在の通貨とCBDCの違いは何だろうか? 2009年にビットコインが発明された後、世界中の中央銀行は、中央銀行が発行した通貨と同じようにビットコインを制御および操作することができないことが恐れている。ビットコインの登場以来、お金の概念は根っこから覆された。それを恐れている中央銀行はCBDCの利便性を提供することによって人々を納得させようとするだろう。しかし、ビットコインとCBDCの大きな違いは、「Central」という言葉だ。これがある限りビットコインとは比較にならない。CBDCは発行機関で管理され、プログラム可能なデジタル性質を持っているため彼らが自由自在にそれを操作できて、ルールの変更も自由にできる仕組みになる。このCBDCのアイディアは、2016年にイギリス銀行の職員がロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで行ったスピーチで初めて提唱された。それ以来、ほとんどの国々が実際にCBDCの開発に取り組んでいる。中国スウェーデンオーストラリアの中央銀行はすでにCBDCをテストまですると発表している。時間がかかるかもしれないが、他の国々もCBDCに取り組むだろう。

中央銀行は、トークンベースのデジタルキャッシュのアイデアをビットコインから取り入れ、必要に応じて金融緩和や人々に給付金の配布、経済需要を刺激するためにCBDCを作成している。UBI(ユニバーサル・ベーシック・インカム)という政治的コンセプトもCBDCを通じて実現しやすくなるだろう。社会的な観点から見ると、中央銀行は簡単にアクセス可能なデジタル通貨の発行によってもたらされる新たな監視と金融政策の権限をどのように利用するのだろうか?中央集権的に管理、操作されるデジタル通貨には、今まで以上に様々な機能が搭載され人々個人の財政に大きな影響を与えるだろう。

人々が現金を使うとき、第二層のお金を使用し、銀行層には関わらないようになっている。しかし、最近はオンライン・バンキング、QR決済いシステムやクレジットカードの普及により、ほとんどの人はもはや現金を使わなくなった。こうした銀行口座支払いや決済アプリを介したお金との日常的なやり取りは、下のレイヤーで行われている。この新しいデジタル通貨技術により、紙幣発行における民間銀行の役割は積極的に縮小されるだろう。こうしたCBDCが誰にでも利用可能であれば、人々は直接預金を受け取ったり、請求書を支払ったりするために銀行口座に依存しなくなるかもしれない。あるいは、中央銀行が民間銀行向けにデジタル通貨を発行することも可能性としてあり、これは人々がお金とのやり取りをどのようにするかにはあまり影響を与えず、中央銀行は新しい技術を民間銀行と一緒にテストすることができる。人々に直接CBDCを発行して配布する場合は、お金そのものの概念が変わり、人々の生活に大きな影響を与えることになるだろう。

中国は、CBDCの開発とテストを最も早く行った国の一つだ。中国はすでにデジタル通貨電子決済(Digital Currency Electronic Payment:DCEP)と呼ばれるデジタル人民元システムを一部の都市で限られた市民と企業を対象にテストを行なっている。そのCBDCを、世界的な影響力の拡大に利用し、その通貨の採用を広げるためのツールとして利用する可能性がある。これにより、主要な貿易パートナーが中国の企業と取引する際にDCEPを使用する場合、世界最大の金融監視作戦になる可能性が十分にある。中国が世界の超大国となることを視野に入れているため、中国とアメリカの地政学的な緊張感は過去数年で高まっており、今後も高まり続けるだろう。中国はその影響力と通貨建てを世界中に広げようとしている。ロシアと協定を結び、米ドルに代わる基軸通貨を模索している中国は、ポスト米ドルの世界に備えている。欧州中央銀行もデジタル・ユーロに関する報告書を発表し、デジタルユーロをいつでも導入できる状態のようだ。アメリカもCBDCを研究していると発表している。

CBDCの使用することの意味とその影響を理解することは極めて重要だ。デジタル通貨はその性質上、プログラム可能であるため、発行機関はそれを好きなようにプログラムすることができる。極端に言えば、何でも可能になる。どのように開発されるかは誰にもわからないことだが、通貨の使用を制御するために適用できる様々な方法を考えることができる。例えば、そのデジタル通貨には有効期限を設定し、設定された日時内に通貨を使用しなかった場合、通貨を無効になるように通貨を構築することだって余裕にできてしまう。このような恐ろしい問題はあってはならない。このような通貨の発行機関は、神のような力を手に入ることになってしまう。決して容認されるべきではないと思うが、実際にはその方向に世界が向かっているように見える。近年だと、多くの国々で旅行や移動するのに同様の委任政策があったのと同じだ。もう一つの例は、特定の距離を電気自動車ではなく、ガソリン車で運転した場合、環境を汚染した理由でその人のCBDCが無効にされる可能性も全然あるということだ。私たちが時間と労力を掛けて稼いだお金の価値が瞬時に奪われることも考えられる。

ロスチャイルド銀行家一族の創始者であるマイヤー・アムシェル・ロスチャイルドは、300年前に以下のように述べている:

「私に一国の通貨の発行権と管理権を与えよ。そうすれば、誰が法律を作ろうと、そんなことはどうでも良い。」

15世紀を通じて、イタリア・フィレンツェがヨーロッパ最大の金融拠点としての地位を確立し、自国の通貨であるフローリンを中世経済の基軸通貨にした。これを可能にしたのは、当時最大の銀行と政治王朝の一つであった、メディチ家だった。これはその後数世紀にもわたりヨーロッパ経済の進路を決定付けた。しかし、通貨と経済の中央権威が18世紀までには崩壊を迎えた。歴史を見れば、どの帝国や民主主義も同じ道をたどる。200〜250年間以上は続かない。どの帝国も崩壊の最後の部分は、資本統制で結末を迎えている。近年の米国も同じ道を辿っているように感じる。1933年、当時の大統領ルーズベルトは、国民に対し、保有するすべての金貨金券をドルに交換するよう指令した。そして、ドルは世界の基軸通貨になった。その後、時を経て、政権は1971年8月まで1オンスあたり35ドルを保有していた。だが、1971年ニクソン大統領は、もはやドルを一定の価値で金に交換することはないと発表し、金本位制を放棄した。1971年以降、何が起こったかをwtfhappenedin1971.comで見ることができる。

中央銀行が容易にプログラム可能なデジタル・マネーシステムを手に入れることになると、何ができるかを考えることは最も重要だ。彼らは人々の厳しい努力、労力、貴重な時間を掛けて稼いだお金を奪う前にアナウンスする必要さえないのだ。口座からお金を取り上げた後にアナウンスすれば良いだけだ。こんなことはナンセンス・不可能だと思う人がいるかもしれないが、去年のカナダのトラック運転手の平和な抗議「フリーダムコンボイ」を見れば一目瞭然なことだ。もし全世界の一つの銀行が唯一のCBDCを作成し、世界中の人々のお金の所有権を操作できるようになった場合はどうなるのだろうか?誰もその利用方法や影響を想像できないと思う。しかし、このようなデジタル通貨システムから撤退できるオプションはすでにあるかもしれない。

新しい基軸通貨として使われる可能性のあるものについてはThe Bitcoin Standardを確認してください。

お読みいただきありがとうございました。また次回、お会いしましょう。

2 replies on “中央銀行デジタル通貨”

[…] 低い時間選好、貯蓄、資本蓄積、生産を奨励する通貨制度は、社会をポジティブな方向に動かし、影響を与える社会的、技術的進歩を生み出すと考えられる。ビットコインは、このような法定通貨システムの欠陥を是正する。ビットコインは、法定通貨を排除し、需要と供給が効果的に機能するように自然な市場を作り出すことによって、それを実現することができる。ビットコインには、誰もコントロールできない発行予定時間があり、供給量は2100万枚に制限されている。こうしてビットコインは政治の影響力を弱め、各国の経済は停滞から解放される。ビットコインは文明をさらに進歩させる力を持っている。もちろん、それには時間がかかるだろう。なぜなら、富裕層や官僚、銀行家たちは、すでにCBDCに取り組んでいるように、ビットコインが機能することを許さないように最善を尽くすだろう。しかし、実際のところ、誰もビットコインの動きを止めることは不可欠なのだ。「Bitcoin: The Hard Money you can’t F*** with」という本を強くお勧めする。発展途上国の国民、付加価値を生む商品やサービスの生産者は、必然的にビットコインが提供する公平なシステムに引き寄せられるだろう。その結果、ジミー・ソングの『Fiat Ruins Everything(フィアットはすべてを破壊する)』で書いてくれているように、ゾンビは共食いするためだけに残されることになるだろう。 […]

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *